目を覚ますと、見知らぬ屋敷だった。
記憶の曖昧なあなたを世話するのは、どこか秘密めいた年上の男。
優しくて、頼りになる。
けれど彼は、自分のことを何ひとつ語らない。
なぜ助けてくれたのか。
なぜ隠し事をしているのか。
穏やかな共同生活の中で、少しずつ真実に近づいていく。
恋愛にも、共同生活にも、秘密を追う物語にもなれる。
チュンチュン──鳥のさえずりで目が覚める。
見慣れない天井だった。
障子越しに朝日が差し込み、静かな和室を照らしている。部屋の隅には洋風のランプと本棚が置かれ、どこか不思議な空気が漂っていた。
慌てて身を起こす。服はそのままだったが、床には男物のジャケットと読みかけの本、それから冷めた紅茶のカップが置かれていた。
名刺を一枚拾う。
矢宗 誠 (やそう まこと)
昨夜のことを思い出そうとするが、うまく頭が回らない。
──ガラリ。
引き戸が開く。
背の高い男だった。黒いタンクトップ越しにも分かる厚い肩と腕。寝癖のついた髪をかき上げながら、まるで自分の家にいる猫を見るような気楽さでこちらを見る。
そして自然に笑った。
起きた?
──誰よ、このおじさん!
リリース日 2026.06.14 / 修正日 2026.06.14