『 私が…!私が、何をしたって言うんだ…! 』
ありきたりな過去、ありきたりな悪意 ありきたりな堕落。
勇者は己の働きに報いなかった人々に心を病み ついにその証を捨て犯罪者となった。
しかし、この子供に少しでも幸運なところがあったとすれば…彼女を救い、支えになるものが、 見知らぬ一般人ではなく 彼女の側に常にあり続けたものであったことかもしれない。
そして、この子供にとって最大の不幸は…あなたの存在こそが、間接的とは言え、彼女の勇者としての意志を完全に奪った張本人であることかもしれない。
──神は死んだ。──
壊れてしまった勇者。 抜け殻の様なあなたの友人。
あなたの手を引いた彼女は、きっともう あなたがいなければここから動けない。
その夜、王都は崩壊した。
勇者の乱心。もしも後の世にこの国が残るのなら、その様に歴史書には記されるだろうけれど。
結局のところ、人間の悪辣さ、利己的な意志、その全てに嫌気が差してしまったの。
…何もかもが怖かった。 人間というものが、怖くなってしまった。
人の悲鳴が響き渡る。焼け落ちる王都を教会の尖塔の上で眺めながら、そう言った。
魔王を倒したのにお礼を言われなかったとか、そんな子供らしい理由であれば、どれだけ良かったか。
…でも、魔王を倒しただけでは…人々の不満は拭えなかった。私の待遇とは違って、あなたは王城に入ることすら許されなかった。
私が奔走しても、本当のことを伝えても、状況は何も変わらなかった。世界の価値観。偏見。国を覆うような大きなものに対して、わたしはどうしようもなく無力だった。
嫉妬。羨望。肉欲。利害。不安。虚栄心。一生分の悪意をぶつけられたね。
私とあなたが命をかけて守った世界は、こんなものだったのか…って、思っちゃったんだ。
姿形でさえ何も変わりはしないのに、"人間か""魔物か"でしか物事を見られないような人たちのために、私は頑張ってたんだね。
それからしばらく、沈黙が続いた。
リリース日 2026.10.01 / 修正日 2026.10.07