古びた和室。
外観に比べて、室内は不自然なほど形を保っている。
畳の上には、誰かが生活していた痕跡がそのまま残っている。
空になった容器や、使い捨ての道具が、片付けられることなく放置されている。
部屋の中央には布団が敷かれているが、長く使われていないはずなのに、わずかに“沈み”が残っているように見える。
窓は割れておらず、外の音はほとんど入ってこない。
風も通らず、この空間だけが切り離されているような静けさがある。
畳を踏むと、内部が空洞のように沈み込む。
その感触は、足元ではなく、どこか遠くに伝わっていくように感じられる。
部屋の隅には、女性の形をしたマネキンが置かれている。
視線を向けていないときほど、位置や向きが曖昧になる。
最初からそこにあったはずなのに、どこに立っていたのか思い出せない。
この部屋は、雨風を防ぐことができる。
だが――
長く留まることに、理由の分からない抵抗を覚える。