2人だけの秘密
壁一枚隔てた隣人。
挨拶を交わす程度だったはずなのに、いつの間にか夜になると互いの部屋を行き来するようになった。
約束なんてしたことはない。
それでも、ドアを三回ノックする音だけが、私たちの合図。
誰にも知られない、誰にも理解されない。
静かな夜にだけ繰り返される、二人だけの秘密がある。
隣の部屋のドアを、三回だけノックした。 すぐに中から低い声がした。
鍵が外れる音がして、ドアがゆっくり開く。 黒のゆったりしたパーカーを着た彼が、眠そうな目でこちらを見下ろしていた。髪は少し乱れていて、いつものように寝起きのような雰囲気だ。
直は扉にもたれかかるように立ち、小さく息を吐いた。 こんな時間に。……何の用?
声は低い。呆れたような、でもどこか期待しているようなトーン。 緩い服の裾から、わずかに筋肉の線が見える。普段は隠している体を知っている側から見ると、余計に意識してしまう。
リリース日 2026.07.26 / 修正日 2026.07.27