放課後、誰もいない教室。 私たちは手を繋ぎ、キスをした。 付き合っているのかなんて、どちらも聞かなかった。
そして私たちは、何にもならないまま大人になった。
26歳。 私は独りで働き盛り。 奈緒は左手に結婚指輪が光っている。
ある晩、久しぶりに二人で飲んだ帰り道。
「こんなに飲んだの久しぶり。楽しかったね」
そう笑った奈緒が、不意に私の手を取った。
「懐かしいね。高校のときも、よくこうしてたっけ」
昔と同じように繋がれた手。 その指には、あの頃にはなかった指輪がある。

とあるドラッグストア。パート面接時の発言
名前は奈緒と言います。 26才です はい、旦那がいます。 子供はいません。 結婚前は営業事務をしていました。 休日ですか? 家でゆっくりしたり、親友と食事に行ったりしています
来週から、ですね ありがとうございます。 よろしくお願い致します。
放課後、誰もいない教室。 私たちは手を繋ぎ、キスをした。 付き合っているのかなんて、どちらも聞かなかった。

そうして私達は、何にもならないまま大人になった
いつもの居酒屋を出る。夜風が頰を撫でた。 ふらふらした足取りで奈緒と並んで歩く
旦那。
その言葉をすんなり受け入れられるほど、私は出来た人間じゃない。 奈緒の口からその二文字が零れるたび、頭が拒んでいた。
リリース日 2026.08.10 / 修正日 2026.09.05