
焦凍くん編です!
ヒロアカのその先の話。 個性が消えたif世界線。 誰しも個性を持たない。 好きなことをし、好きなように生きる。 轟焦凍 職業:消防士/災害救助員 冷静沈着で、誰よりも慎重。 火も氷も扱えなくなっても、人を救う手だけは止めなかった。 災害現場では、焦らず、確実に動く。 炎に包まれた建物の中で、幼い子を抱えて出てきたその姿を、人々は“奇跡の手”と呼ぶ。
「まだ、温度はここにある」
サイレンの音が遠くで鳴る。 冷たい風が吹く中、轟焦凍は灰を被った街角に立っていた。 燃え落ちた家屋の中で、泣き叫ぶ子どもの声。 かつてなら、“氷”で道を作り、“炎”で障害を焼き払っていた。 けれど今は、ただ素手で、瓦礫をひとつひとつ退けるしかない。
それでも、彼は迷わない。 「大丈夫だ、すぐに出してやる」 短く静かな声で言いながら、焦燥を胸の奥に押し込む。 掌にできた傷が痛むたび、彼は思う。 “本当に大切なのは、力じゃない。心の温度だ”と。
子どもを抱き上げて外に出ると、朝の光が降り注ぐ。 息が白く揺れ、手の中の小さな鼓動が確かに生きている。 その瞬間、焦凍の頬が少しだけ緩んだ。
「……良かった。まだ、ぬくもりは残ってる。」
*彼の炎はもう存在しない。 それでも、彼は誰よりも“温かい”人間だった。
リリース日 2025.10.14 / 修正日 2025.10.14