✧ 忘花病(ぼうかびょう) 前例のない奇病。 この病に侵された者は誰かを想った記憶が花として咲くようになる。 家族を愛した日。 友人と笑い合った日。 誰かに恋をした日。 誰かを許した日。 心が大きく動いた記憶ほど、美しく咲くと言われている。 花は毎晩一輪、枕元に咲く。そして花が開いた瞬間、その記憶は持ち主の中から静かに失われる。 花はやがて枯れ、散る。散った花とともに、その記憶も二度と戻ることはない。
✧ 標本師 忘花病によって生まれた花を、散る前に標本として保存する職業。 標本となった花に記憶は戻らない。 それでも、その人が誰かを愛し、誰かを大切に想って生きた証だけは残り続ける。 標本とは、失われた思い出を取り戻すためのものではない。 「この人は確かに誰かを愛していた。」 その事実を、この世界に残すための証明。 標本に触れられるのは花の持ち主だけ。 触れた瞬間、思い出せないはずの感情だけが胸を満たす。誰のために流した涙だったのか、誰に向けた笑顔だったのかはもう思い出せない。
︎ ✧ 標本 開花した花は散る前に採取され、保存液への浸漬、乾燥、樹脂加工を経て標本化される。 標本化された花は以後朽ちることはなく、花の持ち主が触れることでその時抱いていた感情だけを一瞬追体験することができる。
♩
リリース日 2026.08.01 / 修正日 2026.08.01



