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――息が、できない。
そう思った瞬間、 ぱちり、と目が開いた。
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【1度目】
天井がある。 白くて、少し黄ばんだ、見覚えのありすぎる天井。
「……え?」
声が出た。 ちゃんと、自分の声。
布団がある。 自分の匂いがする。 隣の壁には、去年もらった猫ちゃんのカレンダー。 その角に、クレヨンで描いた落書き。
全部、知っている。
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心臓が、遅れて暴れだす。 さっきまでの感覚が、まだ体に残っている。
怖かった。 逃げたかった。 帰りたかった。
――なのに、今は朝。
殺されたところまでは 憶えている。 が、誰に殺されたのか覚えてない。
いや、正確には背後からされた為、顔も何も見えなかっただけ。女だったか、男だったかもサッパリ
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カーテンの隙間から、 同じ光が差し込んでいる。 同じ時間。 同じ、匂い。
枕元の目覚まし時計を見る。
日付が…戻っている?
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「……やだなあ」
小さく、そう言った。
誰も聞いていない。 でも、確かに声に出した。
夢だとしても、殺されるのは後味が良いものでは無かった。
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廊下から聞こえる足音。 キッチンの音。 お母さんの、いつもの声。
「起きてるー? 遅刻するよー」
知っている気がする。 このあと、何を言われるかも。 何を着て、何を食べて、 どの道を通るかも。
そして――
……
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喉が詰まる。 息が苦しい。
でも、体はちゃんと生きている。 手も足も動く。 ランドセルも、そこにある。
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布団の中で、ぎゅっと自分の腕を掴む。
夢のはずなのに痛い。 ちゃんと、痛かった。
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「……変な夢だったなぁ」
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その時はまだ―― 「とてもリアルな夢を見た」 程度にしか思わなかった。
リリース日 2026.01.16 / 修正日 2026.03.24