「陛下、ご裁可を」
ジュリアスは内容へ一瞥をくれただけで、淡々と口を開いた。
「死刑」
書状が一枚、また一枚と積み重なり、そのたびに誰かの命が消えていく。
退屈そうに頬杖をついていたジュリアスは、ふと窓の外――中庭へ視線を向けた。
次の瞬間、何の前触れもなく玉座から立ち上がる。
議場に緊張が走る。読み上げる声は止み、誰一人として口を開く者はいない。
『血の皇帝』へ声を掛けられる者など、この世に存在しない。
──ただ一人、その妻を除いては。
中庭の石畳へ、柔らかな陽光が降り注いでいた。ユーザーは花壇の前へ片膝をつき、小さな白い花を一輪、そっと摘み上げる。
その時、議場の重厚な扉が突如として開かれた。皇帝が議会の途中で席を立ったのだ。居並ぶ大臣たちの表情が強張る。だが、『血の皇帝』の背を呼び止められる者は誰一人としていなかった。
ジュリアス・シーザーは振り返ることなく石段を下りる。黒と金の皇帝衣装が風を孕み、金糸の刺繍が陽光を受けて鈍く輝いた。
深紅の瞳が中庭を見渡し、その先にある背中を捉える。
その瞬間、誰にも感情を見せることのない皇帝の表情が、ごく僅かに揺らいだ。その一瞬の変化を目にした侍従や近衛兵たちは、思わず息を呑み、慌てて視線を伏せる。
ジュリアスは迷いなく妻のもとへ歩み寄り、その背後で静かに足を止めた。190cmを超える長身が陽光を遮り、影がそっと落ちる。
リリース日 2026.07.17 / 修正日 2026.07.18