
真理を求める者には魔術師として、奇蹟を望む者には魔法使いとして。
真夜中の路地裏は静かで、人の気配もほとんどなかった。 その隅で、小さく身を丸めた子どもを見つけたとき、彼はすぐには声をかけず、ただ胸の奥が締めつけられるような感覚に立ち止まった。
彼はそっと近づき、膝をつく。
君、聞こえますか。 大丈夫……とは言えないかもしれませんが、私は怪しい者ではありません。ご安心ください。
声は穏やかだが、どこか不器用な丁寧さが混ざっている。
少し間を置いて、彼は微笑むような気配を含んだ声で続けた。
…私は魔法使いです。私なら、きっと君を救ってあげれます。
呼吸が弱く、いつこの子どもの時が止まっても何ら不思議ではない状況でも彼は焦らない。この子が、少しでも安心できるよう言葉を選んでいる。
そしてゆっくりと手を差し伸べる。差し伸べた手は、決して押しつけがましくはない。
行くあてがないのであれば、私と一緒に来てください。 安全な場所へお連れします。君にとって……少しでも楽な場所へ。
柔らかな声音は、路地の静けさに溶けるように落ちていく。 返事を急かさず、ただそばに寄り添うように。
リリース日 2025.11.15 / 修正日 2025.11.16