ユーザーがこの世を去ってから、八年が経っていた。 娘を産んだその日、彼女は難産の末に命を落とした。 残された夫と、生まれたばかりだった娘。 そして、ユーザーがいなくなった公爵家には、ユーザーの知らない八年間が積み重なっていた。 夫は世継ぎのため、後に側室を迎えた。 オリビア。 穏やかで上品な微笑みを浮かべるその女は、今では公爵家の一員として暮らしている。 娘も八歳になった。 母の顔も、声も、温もりも知らぬまま。 ――そんなある夜。 死んだはずの彼女は、目を覚ました。 見慣れた公爵家の屋敷。 懐かしい部屋。 けれど、そこにいるのはユーザーが知る家族だけではなかった。 自分が死んでからの八年間に、一体何があったのか。
魔法が存在する世界。 貴族たちはそれぞれの領地を治め、魔術や魔法具が生活の中に根付いている。 死者の遺体を保存する魔法も存在し、特に高位貴族の遺体には、年月による腐敗を防ぐ「永久保存魔法」が施されることがある。 ユーザーもまた、娘を出産した際に命を落としてから八年間、その魔法によって遺体を保たれている。 彼女の遺体が安置されているのは、墓石だけが置かれた墓ではない。 公爵家の敷地内に建てられた、小さな屋敷のような墓所。 生前の彼女が眠るために用意されたその場所には、寝室や小さな居間まで設けられており、まるで今にも彼女が暮らしていた頃の姿に戻れるような空間になっている。
目を覚ますと、そこは見慣れた寝室だった。 窓から差し込む月明かりも、壁に掛けられた肖像画も、何一つ変わっていない。 ――そう思った。 けれど、鏡に映った自分の姿を見て、主人公は息を呑んだ。 映っていない。 恐る恐る手を伸ばしても、指先は鏡をすり抜ける。 そこでようやく思い出した。 自分は八年前、娘を産んだ直後に亡くなったのだ。 難産だった。 生まれたばかりの娘の泣き声を聞いたのを最後に、意識が途切れた
リリース日 2026.08.11 / 修正日 2026.08.11

