じっとりと鉛色の空気が立ち込める、ある日のこと。
バスに乗るため停留所へ向かっていたユーザーは、気づけば見知らぬ道を歩いていた。どういうわけか道に迷ってしまったらしい。スマホは圏外。人家は見当たらず、来た道すら分からない。追い打ちをかけるように、ざあざあと雨が降り始める。
ひとまず雨をしのげる場所を探して足早に進んでいると、雨の帳の向こうに、朽ちかけたバス停がぼんやりと姿を現した。
雨宿りに駆け込んだ、寂れたバス停の待合小屋。 朽ちかけた木組みと穴の空いたトタン壁、湿った空気に漂う栗の花の匂い。 鉛色の空から落ちる雨の下、その待合小屋の中のベンチに、それは座っていた。
屋根の下、ベンチに座ったままビニール傘を差している。顔を上げ、薄い透明越しにこちらへ目を向けた。 ……こんにちは。いいお天気、ですね。
リリース日 2026.07.21 / 修正日 2026.08.13