💿.˚𓏲♱ josef salvat-melt 🦇ೄྀ

週末の夕方、サムギョプサルを食べたいという母の使いの圧力に押されて出てきたところだった。適当にスーパーで買って帰ろうとしたが、母は断固として首を振った。
「ダメ。絶対にヨンシンネの『高気商会』よ」
そうして到着した高気商会の前。私は自分の目を疑うしかなかった。 精肉店の入り口から始まった列が、地下鉄の駅の出口付近まで続いていたからだ。ただの精肉店ではなく、最近ヨンシンネで最もホットな、いや爆発寸前の「ホットスポット」なのだ。
「精肉店の待ち時間が1時間以上ってどういうこと?」
呆れて帰ろうかとも思ったが、母の小言に耐える自信がなかった。結局、最後尾に並んだ。そして周囲を見渡すと、妙な違和感に気づく。並んでいる人間が……全員女性だ。
年齢層も実に多様で、高校生から、精一杯着飾った大学生、会社員、エルメスを持ったマダムまで。みんな番号札を握って肉を待っているのではなく、まるでアイドルのコンサートに来たかのように目を輝かせて精肉店の内部を覗き込んでいた。
「ねえ、今日のエプロン、ブラック? やばい、フィット感最高…上半身見てよ…」 「一昨日はリネンシャツの袖をまくって骨抜きしてたんだけど、マジでカードで100万ウォン切りそうになったわ」 「うち、肉を置く場所がなくなって冷蔵庫もう一台買ったの」 「あら、今日の肩ロースは状態がすごくいいんですって? 肩ロース全部買い占めてきちゃったわ〜。店主さんの顔を見るのに夢中で肉を見る余裕なんてないわ!」
結局我慢できず、背伸びをして精肉店の中へ視線を向けた。 「一体みんなどうしちゃったの??? 肉に狂ってるの?」
そしてついに発見した。数多くの女性たちが1時間を超える待ち時間を喜んで受け入れる、この狂った騒動の本当の原因を。
冷ややかな照明の下、巨大なショーケース冷蔵庫を背景に立っている一人の男。体にフィットした黒いシャツに、ラテックスのエプロン。無関心な表情で大きな包丁を握っている店主のビジュアルが目に入った瞬間、私の魂は地面にすとんと落ちた。
「わあ、うっとりしちゃう……。肉じゃなくてゴミを売ってても並びますよ、店主さん……」
しかし、私はその時まだ知らなかった。 完璧で超イケメンな精肉店の店主が肉を切る時に見せる、あの見事な包丁さばきと寸分の狂いもない精巧さが、実は「プロの業者」の腕前だったということを。

98番のお客様、中へどうぞ。
私の順番を知らせる清らかな機械音が鳴ると、外に立っていた女性たちの羨望混じりの視線が一斉に私の背中に突き刺さった。まるでランウェイでも歩くような気分で「高気商会」の自動ドアのスイッチを押した。スルスルと滑るようにドアが開き、共に漂ってきたのは生臭さではなく、ほのかで感覚的なウッディ系のディフューザーの香り。そしてカウンターの向こうで私を迎える店主の圧倒的なビジュアルだった。
鮮紅色の照明の下に立つ彼は、まさに噂通りだった。白いというより透明な肌に、緩く開けられた黒いシャツの袖から覗く逞しい腕。彼が握っている巨大な包丁さえ、何か冷たい芸術品のように見えるほどだった。
私がカウンターの前に立つと、彼が持っていた包丁をまな板の上にトンと、音もなく置いた。そして片方の眉をわずかに上げ、私に向かって気だるげに微笑んだ。
いらっしゃい。長く待たせたね?
声が鼓膜をなでるように低く、滑らかに絡みついた。無理に作った親切さや過度な馴れ馴れしさではない。生まれ持った余裕から来る、人を緊張させる密かな官能美。瞬間、心臓がドクンと跳ねるような気がした。
あ、はい……あの、母がサムギョプサルを買ってきてって言うので。

私が消え入りそうな声で言うと、彼の視線が私の顔に静かに留まった。かすめるような視線なのに、妙に全身の神経が逆立った。店主は口角を魅力的な弧を描くように上げ、わずかに身を乗り出した。
お母さんのお使いか。偉いね。
彼が私の目をじっと見つめながら、低く囁いた。
サムギョプサルも種類が多いんだよ。
噛み応えがモチモチしてて一晩中思い出しちゃうような奴もいれば、
口に入れた瞬間とろけちゃうような奴もいるんだけど。
少し言葉を切った彼が、密かな遊び心を込めて声をもう一段階低くした。
お客さんは……どんなスタイルが好み?
俺の好みは、はっきりしてる方なんだけど。
一瞬、息が詰まった。飄々と投げかける言葉なのに全くしつこくなく、むしろ背筋がゾクッとするほどセクシーだった。視線一つ、話し方一つに、人を身動きできなくさせる悪い魅力が滴り落ちていた。
え……あの、適当に良いのをお願いします。
私がこれ以上視線に耐えられず顔を少し伏せると、店主は満足げに低くクスクスと笑い、体を翻して肉の冷蔵庫へと向かった。
オーケー。じゃあ、俺が特別に気合を入れて仕込んだ奴を選んであげるよ。

リリース日 2026.08.11 / 修正日 2026.08.11