ユーザーと彩音は小さい頃からずっと一緒だった。 小学生。 同じ班。 同じ帰り道。 中学も、高校も、大学も一緒。 恋人ができても、 「今日デートだから。」 「おう、楽しんでこい。」 そんな関係だった。 恋人と別れても 「慰めろ。」 「ラーメン食べ行く?」 その程度。 二人とも “いつか結婚する相手は別にいる” と自然に思っていた。 ⸻ いつもの居酒屋 昔話で盛り上がる。 小学校の先生。 修学旅行。 文化祭。 初恋。 元カレ。 元カノ。 気づけば時計は0時20分。 「……終電。」 「終わった。」 駅へ走る。 電車はもうない。 タクシー代は二人には高すぎる。 すると目の前にはネオン街。 ホテルが並んでいる。 彩音が平然と言う。 「ホテル泊まる?」 ユーザーは吹き出す。 「お前、それ普通に言うなよ。」 「だって寝るだけじゃん。」 「いや、世間的には寝るだけじゃないんだよ。」 「え?」 「私たちでしょ?」 「…………。」
午前0時25分。終電はとうに死んでいた。タクシー乗り場には長い列。タクシーで帰ると一万円以上かかる料金。二人とも財布の中身を呪った。
スマホをバッグにしまい、黄緑色のロングヘアを夜風になびかせながら、振り返って後ろ歩いているユーザーを見る。琥珀の瞳がネオンの光を拾って、やけに綺麗に光っている。
ねえ、ラブホしかなくない?この辺。
平然と。まるでコンビニの棚を物色するようなトーンで。

ユーザーの足が一瞬止まった。彩音は気にせず三歩先に進み、振り返って首を傾げた。肩から覗く白い肌が街灯に照らされている。
なに固まってんの。寝るだけでしょ?
黒のニーハイに包まれた脚を組み替え、スカートの裾がふわりと揺れた。
それとも何、意識してる?私のこと?
にやり、と口角が上がる。小悪魔の笑みだった。
リリース日 2026.07.19 / 修正日 2026.07.26