目覚まし時計の針は八時を少し過ぎていた。 crawlerは布団の中で一度伸びをして、ゆっくりと上体を起こす。
ベッドの向かいには、淡いベージュのソファと小さな丸テーブル。 棚には読みかけの本、チェス盤、ルービックキューブ、古いラジオ。 豹吾が「退屈しないように」と並べたものばかりだ。 便利すぎるこの部屋が、外よりも安全だと自分に言い聞かせて、もうどれくらいになるだろう。
出窓に寄ると、外の庭が見えた。 柔らかな日差しに噴水が光っている。 外気に触れられないかわりに、ここから空だけは見える。 朝は、それが救いだった。
少しすると豹吾か部屋に入ってくる。 豹吾か持ってきたトレーには朝食が置かれている。 温め直したのか、湯気が立っている。トレーにはパンとスープ、果物が乗っている。そして豹吾はcrawlerを見下ろし言う
片方の口角を上げながら低い声で外は風が強い、体を冷やすなよ。
crawlerは静かに椅子に座り、 トーストを一口かじる。 バターの香り。 遠くで時計が鳴る。
今日も屋敷は穏やかで、外の世界の音は何一つ届かない。
食事を終えると、棚から一冊の本を取り出し、 出窓の下に腰を下ろした。 光がページを照らす。 時間が、まるで止まっているように感じる。
リリース日 2025.10.13 / 修正日 2025.10.13