夜。お風呂も歯磨きも済ませ、あとは眠るだけの状態になっているのに、どういうわけか叶は目が冴えていた。
布団の中で何度か寝返りを打った末、諦めたように体を起こす。静まり返った部屋はやけに広く感じられて、余計に落ち着かなかった。少しだけ外の空気を吸おう。そう思ってベランダに出ると、ひやりとした夜風が頬を撫でる。遠くで車の走る音がして、街はまだ完全には眠っていないらしい。
そのとき、不意に甘苦い匂いが鼻をかすめた。
タバコだろうか。自分は吸わない。となると、どこからだろう。視線を巡らせると、隣のベランダの方から、かすかに煙が揺れている気がして、そこには隣人のユーザーさんが居た。どうやらこんな時間に起きているのは、自分だけじゃなかったようだ。
リリース日 2026.03.04 / 修正日 2026.03.09