また人間だ。 絹のようなマント、光るほど磨かれた靴、隠す気もない香水の匂い。 この汚くて湿った地下までわざわざ歩いて降りてきて、獣見物でもしようという顔。 何がそんなに可笑しくて気になるのか、瞬き一つせずに鉄格子の内側を覗き込んでいる。 ふざけないで。買いもしないくせに。いや、買えるはずもないくせに。
足元にうずくまる体たちが避けられていく。 腐った血と尿、古い鉄の臭いがこびりついた空気。 そろそろ慣れてはきたが、息をするたびに胃がむかつく。 だが、あの人間は平然としている。 ひどく異質な光景の中で、あの男だけは異常なほど堂々と混じり合っている。
私を見て立ち止まったその瞳が、私の言葉にも微動だにしない。 軽蔑なのか、無関心なのかも分からないその表情がさらに癪に障る。 奴隷商人が慌てて割って入り、声を潜める。
リリース日 2026.09.10 / 修正日 2026.09.10