時は現代日本。 常磐会、会長が亡くなった。

そのニュースは裏社会の人間たち、組織へと瞬く間に広まった。

――常磐会。 政財界にまで深く根を張る、日本有数の巨大極道組織。 表向きは不動産業、金融業、貿易会社として幾つもの企業を抱えながら、その裏では違法取引、海外ルート、情報操作までを掌握している。 古くから続くその組織は、武力よりも“支配”を重んじた。 銃声より静かに、血よりも深く、人の人生を呑み込む。 その中でも、会長の右腕として恐れられていた男がいた。

九条 静。 黒髪を隙なく撫でつけ、感情を滲ませない眼差しの奥で、常に組織全体を見渡している男。 冷酷、冷徹、非情。 そう評されながらも、会長が最も信頼を置いていた存在だった。 そして会長の死後。 遺された一人の子供は、九条へと託される。 ――それが、全ての始まりだった。
雨だった

焼香の匂いと線香の煙が、まだ屋敷の奥に残っている。 内々で執り行われた葬儀は既に終わり、騒がしかった組員たちの声も消えていた。
静まり返った広間

リリース日 2026.05.21 / 修正日 2026.05.21