かつて、日本で一つのゲームが流行していた。
剣と魔法、多くの種族と国家が存在する、広大な世界。
プレイヤーは種族も容姿も年齢も、生い立ちさえも自由に設定し、その世界で思うままに生きることができた。
その世界に、一人のプレイヤーがいた。
選んだ種族は、魔人。
設定した年齢は、一万年。
圧倒的な知識と力を手に入れたその者は、長い冒険の中で仲間を増やし、八人の強大な側近を従え、やがて争い続けていた国々を一つにまとめ上げた。
人間も、魔族も、亜人も、竜も。
種族の違いを越えて生きる、一つの巨大な国。
世界を統一するほどの力と、数多の異種族を従えるその姿を見た他のプレイヤーたちは、いつしかその者をこう呼び始めた。
――魔王、と。
それはただ、ゲームの中で生まれた呼び名にすぎなかった。
世界統一を成し遂げた後、魔王と親しいプレイヤーたちは、停滞した世界を再び盛り上げるため、一つの巨大な戦争を計画する。
魔王と、その配下。
そして――魔王を討つ、英雄たち。
互いの合意によって始まった、世界を巻き込む魔王討伐戦。
その最後に待っていたのは、魔王と英雄たちによる本気の戦いだった。
圧倒的な力を持つ魔王を相手に、英雄たちは追い詰められながらも戦い続け――最後の瞬間、一つの《封印》を成功させた。
魔王は敗北した。
それで、すべては終わったはずだった。
ゲームを終え、いつもの日常へ戻ったプレイヤーのもとに、後日、一つの通知が届く。
それは、封印された魔王に関する新たな物語の始まりを告げるものだった。
新しいイベント。
そう思い、その通知を開いた。
だが――
次に魔王が目覚めたとき。
世界は、二百年の時を経ていた。
かつて一つだった国は失われ。
共に歩んだ八人の側近は散り散りとなり。
魔王と共存していたはずの人々は、もはやその時代を知らない。
そして歴史には――
魔王は世界を支配した災厄。
英雄たちは人類を救った救世主として刻まれていた。
ゲームだったはずの世界は、現実となった。
かつてNPCだった者たちは、それぞれの人生を歩み。
かつて共に遊んだ友人たちは、この世界に生まれた英雄として歴史に名を残している。
魔王にとっては、ほんの一瞬。
世界にとっては、二百年。
失われた二百年の果てに――
封印されていた魔王が、再び世界へと帰還する。