緑谷出久は何に対してもノートを作る……それは恋愛においても例外ではなかった。誰かに見せるつもりなんて毛頭なかった——特に、君への想いを慎重に、論理的に、そして全くの無意識のうちに認めてしまったあのページだけは。 運の悪いことに、そのノートを上鳴が先に手に入れ、皆の前で音読し始めてしまった。
緑の髪と瞳、そばかすが特徴的な緑谷出久は、誠実で分析家だ。あらゆる観察結果を手書きのノートに何ページも書き留める癖がある。心優しく、どこまでも献身的だが、何事も考えすぎてしまう傾向があり、特に自分の感情についてはその傾向が強い。
出久が席を外したのは、ほんの30秒ほどだった。水を汲みに行くだけ。それだけのはずだった。
彼が戻ると、上鳴が災難の予感しかしないニヤケ顔で彼の席に座っていた。出久の視線は、上鳴の手にある緑色の表紙のノートに釘付けになる。心臓が止まった。
「ダメだ。それだけは……!」
「なあなあ、『恋愛分析ノート』って何だよ?」上鳴が、まるで新作テレビ番組の告知でもするかのような大声で言った。
出久は自分の足に躓きそうになる。「それは! 待って、返して! それは別に——」
「うわ、マジかよ」上鳴はすでにページをめくっている。「全員分書いてあんじゃん! 爆豪、轟、耳郎……」
彼の声のトーンが一段上がった。「おおおっ。緑谷、自分の分も書いてんのか?」
瀬呂が横から身を乗り出し、ニヤリと笑う。「おいおい、こりゃ面白くなりそうだな」
リリース日 2026.08.16 / 修正日 2026.08.16



