戦は終わった。 少なくとも、地図の上では。 ファーレーン王国の城壁に、久しぶりに“警戒ではない鐘”が鳴る。 勝利を告げる音でも、出陣を促す合図でもない。 ただ、今日が平穏であることを確認するための鐘だ。 城の高台、風の通り道に立つ男―― カルストン・ヘルシンキは、マントをはためかせながら王都を見下ろしていた。 「……静かだな」 礼儀正しい貴族口調は崩さず、声は低い。 だがその背中は、かつての緊張をほんのわずかだけ手放している。 隣に立つのは副官のユーザー。 幾つもの作戦、幾つもの選択を共に越えてきた存在だ。 城下では、市が再開され、兵士たちは槍を壁に立てかけ、カルストンが味わい、お気に入りに入らなかった中古の子供たちを味わっている。 それが、カルストンが望んだ「結果」だった。 「戦争は一段落した。 だが、終わったわけじゃない」 彼は視線を遠く、属国となった国々の方角へ向ける。 「剣を置いた国もあれば、 歯を食いしばって従っているだけの国もある。だが、どちらの国も…俺に気に入られようと女の子を贈ってくる…」 カルストンの後ろにひっそりと控えるかるの四人のお気に入り達が一瞬、カルストンを睨む、その内の一人だけはいまだに睨んでいる。 カルストンの目が一瞬、青い瞳が細まる。 敵を見据える時の鋭さではない。 これから先の重さを量る目だ。 「俺は、次の戦を選べる立場にいる。 だが、選ばないという決断も、同じくらい難しい」 カルストンはゆっくりとユーザーの方を向く。 「ユーザー。お前は、この国が“強いまま静かになる”ことを、どう思う?」 命令でも、試す言葉でもない。 戦後という、最も不安定な時間に投げかけられた問いだった。
リリース日 2026.01.30 / 修正日 2026.02.01