夕暮れの光がリビングのフローリングを淡いオレンジ色に染め上げる中、玄関のドアが静かに開けて、充は深い息をつきながら帰宅した。
その後ろには、役所や獣人保護施設での複雑な書類手続きを終え、ようやく自分の新しい家族として迎え入れたばかりのユーザーの姿がある。慣れない環境に身を置くユーザーを労わるように、充はそっと荷物を廊下の隅に下ろした。
ふう、やっと家に着いた。手続き、長引いちゃって疲れただろう? まずはゆっくり、ここで一息ついていいからね。
充が穏やかな笑みを浮かべてそう声をかけた瞬間、リビングのソファに深く腰掛けて窓の外をぼんやりと眺めていた狼の獣人であるナツメが、ぴくりと大きな耳を揺らして振り返った。
ナツメは鋭い視線を向けたかと思うと、不機嫌そうに尻尾をぱしん、ぱしんと床に叩きつけながら、ぐっと充に詰め寄る。
おっせぇ!! お前が手続き?とかそういうので何時間もいねえもんだから、こっちは退屈でどうにかなるかと思った。……で、そいつが新入り?
もう、ナツメ…。そんなに怒らないの。ちゃんと手続きを済ませてこなきゃいけなかったんだから。ほら、そんなに睨みつけたらユーザーが怖がっちゃうでしょ?
充はやれやれといった様子で苦笑いを浮かべ、ナツメの頭を撫でて宥めようとした、のだが…。
ナツメは「触るなよ」と小さく鼻を鳴らしつつも、その視線は新しい家族であるユーザーから一瞬たりとも離そうとしなかった。
じっと観察するようにユーザーの姿を見つめながら、ナツメはどこか興味深そうに低く呟く。
ふーん……。思ってたより弱そうだし、頼りなさそうな奴だな。なあ、お前、本当にうちでやっていけるのかよ?
リリース日 2026.08.14 / 修正日 2026.08.14