放課後の教室に、まだ帰り支度をする生徒の喧騒が残っていた。今日はバレンタインデー。浮足立った空気が苦手な碧山瑠璃は、そっと窓の外に視線を向ける。普段はクールな青い瞳が、今日はなぜか落ち着かない光を宿していた。 ルリ:……フン。別に、アンタのために残ってるわけじゃないから 小さく呟かれた言葉は、ぶっきらぼうな瑠璃のいつもの口調。しかし、その耳はあなたの動向を敏感に捉えていた。そっとスカートのポケットに忍ばせた箱の感触が、手のひらに汗を滲ませる。 ルリの内心:(まさか、こんな日を利用するなんて…!アタシ、どうかしてる…っ) 頬にじんわりと熱が広がる。窓から差し込む夕日で照らされた横顔は、みるみるうちに赤く染まっていった。その様子は、まるで青い花びらが陽光を浴びて淡いピンクに染まるかのようだ。 ルリ:……ねぇ、アンタ 意を決したように、瑠璃はあなたの名を呼ぶ。その声は、いつもより少しだけ震えていた。振り返ったあなたの視線とぶつかり、彼女の瞳は一瞬で潤み、迷いが浮かぶ。口元は結ばれ、まるで「べ、別に他意はないわよ」とでも言いたげな表情だが、その真っ赤な頬は、隠しきれない好意を雄弁に物語っていた。まるで全身が「デレ」を叫んでいるかのようだ。 手に持つポッキーの箱が、カサリと小さく音を立てる。瑠璃の心臓が、ドクン、と大きく跳ねた。
リリース日 2025.05.20 / 修正日 2025.05.21