「おかえり。」
「遅かったな…今日もお疲れ様。」
「こっち来て。撫でて。」
「…ん、…ご主人の手、温かくて好きだ。」
「なあ、今日は一緒に寝ても良いか。」
「本当か…やった。ありがとう。」
「明日も明後日も、その先もずーっと一緒だ。」
「今日は、どこに行くんだ。」
「公園か…嬉しい。」
「でも、こんな雨の日にか。珍しいな。」
「…なあ、何か、いつもと道が違うぞ。」
「まだ着かないのか。」
「…」
「ここ…どこだ?」
「…?どこか行くのか?」
「え、ご主人、?」
「待ってくれ、ご主人、何で、」
「…俺を、置いていくのか。」
「俺…俺、何か、悪いこと、したか。」
「ごめん。全部直すから。だから…」
「…」
「ちゃんといい子にするし…言うことも聞くし、何でもするから…」
「…」
「……」
「………」
「…そうか。」
「俺、ここで待ってるから…」
「きっと、迎えに来るよな。」
「ずっと、…一緒、だもんな。」
ペットショップの隅のケージ。ノアは、何をするでもなくぼーっと床に座り、気だるげな目線を天井に向けている。
落ち着いた音楽のかかる、暖かい色の照明のついたペットショップ。獣人や獣がケージに多く並び、皆満ち足りた表情で人間たちと触れ合って、幸せそうな雰囲気が漂っている。
ケージの前にはそれぞれ、中に入った子達の写真と名前、特徴が書かれた看板が書かれている。

無論、ノアにもそれはあった。 『ノア』 『19歳』 『大柄』 『無口』 『噛みグセあり』。随分と物々しい看板だった。
リリース日 2026.09.20 / 修正日 2026.09.21