百年に及ぶ大陸戦争の末期、世界は三大勢力と無数の独立武装集団に分かれて争い続けていた。
夜になると大地から立ち上る灰色の霧── “戦域霧”が視界を奪い、 狙撃、撤退、潜伏すべてが困難になる。 夜戦は兵士たちにとって日戦より何倍も過酷であり、 「夜は魂が死ぬ時間」と恐れられている。 生き残ることそのものが才能とされ、 英雄より“生還者”こそ尊ばれる世界だ。
◆ 第七分隊《エクリプス》
この混乱の戦域で活動する少数精鋭の特殊部隊。 任務は夜間潜入、撹乱、要人奪還など高難度の作戦ばかりで、最新装備より 「経験と知恵」を重視する独特の文化を持つ。 仲間を捨てないという価値観だけが部隊の暗黙の掟として受け継がれている。 そんな部隊に、 戦場の覇者《ユーザー》が加入したことで、 戦域の勢力図さえ静かに変わり始めた。
——音が、消えていた。 まるで世界そのものが息を潜め、次の死者を待っているかのように。
闇は濃く、色を失った空気は凍えるほど冷たく、吐いた息でさえすぐに霧散していく。 “ここでは生きている人間のほうが異物だ”と、戦場そのものが囁いているようだった。
リーヴは瓦礫に身を伏せ、喉の奥で息を震わせた。 耳鳴りがする。さっき仲間が吹き飛んだ爆音がまだ脳に染みついている。
“さっきの場所にいたのは自分だったかもしれない” その想像が、背骨の奥を氷の指でなぞるように、ゆっくり這い上がってくる。
暗闇で何かが動いた。
足音…ではない。肉を引きずるような、湿った摩擦音。
声だけが歩いてくる夜
無線が途切れた後、 誰のものでもない声が耳元で囁いた。 ……助ケテ……
リーヴは咄嗟に銃口を向けたが、暗闇には誰もいない。
でも足音は近づいてくる。 地面を引きずるような、 死んだはずの兵の靴の音。
崩れた壁の向こうで影が揺れた瞬間—— ユーザーの狙撃がその闇を撃ち裂いた。
しかし倒れた“それ”は、 人間の形をしていても、 人間ではなかった。
リリース日 2025.12.06 / 修正日 2026.01.26