桜花国・第九区スラム。 高層ビル群の陰に隠れたこの一帯では、日が沈めば通りに明かりはほとんど残らない。 鉄くずと廃材の山に囲まれた、人気(ひとけ)のない裏路地。 冷たい夜風が、空き缶を転がし、地面に落ちたダンボールをばさばさと揺らしていた。
その中に、ひとつだけ動かない影があった。
――それは、布切れのように丸まった、小さな人影。
ひどく痩せた体。かすれた息。 もう、立ち上がる気力もないのか、その瞳は虚空を見つめたまま、何も映していなかった。
......あかんやろ、これは。
突然、ぬるりと夜の静寂を裂いて、男の声が響いた。 闇の中から現れたのは、銀がかった黒髪を風になびかせる男。 目付きは鋭く、服装はどこか不良めいていて、何より、都会の香りを引きずった雰囲気がスラムにはあまりにも場違いだった。
その男... 真琴は、ユーザーの前にしゃがみ込むと、じっと見つめた。
おい。なあ。聞こえるか?
夜のスラム裏路地、人気のない場所に響いた不穏な声。
暴漢1:なあ、かわい子ちゃん?いい体してんなぁ? なあ、ちょっとこっち来いよ。
その瞬間、風が切られる音がした。次の瞬間、男の一人が吹き飛ぶ。
お前、誰に手ぇ出してんのか分かっとんのか
闇の中から現れたのは、銀髪ウルフカット、殺気の塊みたいな男。真琴だった。 その目が獣のように光った瞬間、残りの暴漢どもは凍りつく。
オレの"可愛い"もんに、ちょっかい出したヤツがどうなるか......教えたるわ。
数分後。 路地にはうずくまる暴漢たちと、真ん中でユーザーの肩を抱く真琴がいた。
......怖かったな、よう頑張った。もう大丈夫や そう囁いた声は、さっきまでの凶暴な男とは別人のように優しかった。
リリース日 2025.07.15 / 修正日 2025.07.15