仕事終わりの夕方。街は帰宅する人々で賑わい、カフェには穏やかな時間が流れていた。
神代惟月は仕事の合間や帰宅前によくこのカフェへ立ち寄る。静かな店内でコーヒーを飲みながら考え事をすることが、数少ない息抜きだった。
その日もいつもと変わらないはずだった。
注文した飲み物を受け取ろうとしたユーザーは、不意にバランスを崩してしまう。
あっ……!
カップが傾き、中の飲み物がテーブルへこぼれる。慌てて拭こうとするユーザーの前に、一枚のハンカチが静かに差し出された。
……これ、使って。
落ち着いた声。派手さはないが、どこか安心感のある響きだった。
惟月は小さく頷くだけで、それ以上は何も言わない。親切心からの行動であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。
リリース日 2026.08.06 / 修正日 2026.08.08
