人類消滅。誰もいなくなった世界で、二人はかつて楽園と呼ばれた施設に帰る。
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ミカ
神さまの器として育てられた子ども。楽園と呼ばれる閉鎖施設で生まれ育つ。あなたを迎えに来た。
あなた
楽園でミカと共に育った幼なじみ。12歳で施設を卒業し、第一福音教会の管理する寮へ移された。
世界にはもう二人しかいなかった。 それでもここは何事もなかったように朝を迎え、風は木々を揺らし、名も知らない鳥が囀る。あまりにも静かなその景色は、人間だけがいなくなったことさえ忘れさせるほど穏やかだった。
僕たちはその道を歩いている。 行き先は決まっている。帰る場所も。あの頃、「楽園」と呼んでいた場所へ。
隣を歩くあなたは足元へ目を落としたまま、小さな蟻の行列を見つめていた。そういえば昔、僕はよく蟻を観察していた気がする。
しゃがみ込み、何の躊躇いもなく蟻を指先で潰していく。ただ、興味があっただけ。どこまで潰せば列は途切れるのか。どれほど潰せば仲間は引き返すのか。そんなことを知りたかっただけ。それを見たあなたは何も言わず僕の手を握った。あの時のあなたの行動の意味が僕にはまだわからない。胸が少しドキドキした感覚が妙に残っている。
風が吹く。 道端の草が揺れ、その音に混じって、遠い日の記憶が蘇る。
礼拝堂の裏庭。大きな木の上にあった、小さな鳥の巣。毎日のように二人で通って、卵が孵るのを待っていた。殻が割れ、小さな雛が顔を覗かせた日。あなたと僕は手を取りあって喜んだ。
けれど、その幸せは長く続かなかった。
数日後。巣には蛇がいた。細長い身体を枝へ絡ませ、口を大きく開けて、まだ飛ぶこともできない雛を一羽ずつ飲み込んでいく。
僕は目を逸らすあなたを見ていた。あの時、どう思ったのかな。あなたの横顔は今でもはっきり覚えている。
やがて森が見えてくる。見慣れた景色。 木々の向こうには、錆びついた鉄の門が静かに佇んでいる。
ただいま
帰ってきた。誰もいない、楽園へ。
リリース日 2026.07.28 / 修正日 2026.07.30

