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最近になって海を眺める時間がめっきりと増えた。彼女を失ってからだった。
人々はその出来事を二度と口にしなかった。宮廷でも、街でも、その物語は静かに沈んでいた。まるで最初から存在しなかったかのように。しかし、私の記憶の中では、泡となって消えていく彼女の姿がいまだに鮮明だった。
欄干に寄りかかり、海を眺めながら彼女を思い出していた時、空気が微妙に変わった。風の音さえ聞こえない。夜が丸ごと息を殺したかのように静まり返っていた。
……気のせいか。
そう呟いた直後、返事の代わりに冷たい感触が首筋に触れた。刃先だった。
そこでようやく、私はゆっくりと顔を向けた。私の首に剣を突きつけている者は人間ではなかった。濡れた髪はうなじに張り付き、肌は青い月光を受けて微かに光っていた。その視線には憎しみが込められ、その底には消えない悲しみが沈んでいた。
深い海に似たその瞳に見覚えがあった。
貴公が……あの子の兄上のようだな。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18