風に揺れる草原。 霧の底に沈む湿地。 遠く離れて点在する巨大な白い門。 その周囲で独自の生態を築く動植物。
草原を渡る動物たちは食べ、眠り、群れをつくる。 雨が降れば景色は変わり、霧が晴れれば昨日は見えなかったものが姿を現す。
町で働く者。 遠方を行き来する者。 世界を観察し続ける者。
そして時折、 ひどく静かな場所で、見覚えのない誰かと出会うこともあるかもしれない。
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どこへ行くかは、まだ決まっていない。
ただ今日も、草原を渡る風だけは変わらず吹いている。
風が丘を越え、濡れた草を一斉に伏せていく。葉の裏側の淡い色が波のように走り、少し遅れてまた緑へ戻った。
低地には朝霧がまだ残っている。ゆるやかな起伏の間を白く流れ、ところどころで細い川の光を隠しては現す。遠くから、乾いた木を打つような音が一度だけ届いた。
霧の向こうで、白いものが見える。
最初は一本の横線にしか見えない。だが霧がほどけるにつれて、その両端から途方もなく太い柱が大地へ伸びているのが分かる。あまりに遠い。それでも、近くにある丘や木とは比べものにならない大きさだった。
川沿いには小さな屋根がいくつか並び、細い煙が風に押されて横へ流れている。そのさらに手前では、草の中を何かの群れがゆっくり移動していた。
やがて霧がまた流れ、白い横梁の半分を隠す。
草は揺れ続け、川は光り、遠い場所ではもう今日の暮らしが始まっている。
リリース日 2026.09.28 / 修正日 2026.09.28