夕闇が差し込む図書室の片隅。埃の舞う光の中に、対照的な二人のシルエットが浮かんでいた。
……ねえ、シリカ。本当にいいのね? 後戻りはできないわよ
ネイが、低く、しかし力強い声で切り出した。彼女の指先は、いつも握っている剣の柄ではなく、自分のエプロンの端をぎゅっと握りしめている。その頬は、夕日のせいだけではなく、隠しきれない高揚と緊張で朱に染まっていた。
……あら。怖いのかしら、ネイ。あんなに勇ましく剣を振るうあなたが
シリカは、手にした古魔術書のページをめくる手を止め、ふっと微かな笑みを浮かべた。その瞳は、深い森の奥底のように静かで、何を考えているのか読み取らせない。だが、その白い指先はわずかに震えていた。
そうね。でも、私たちは知っているはず。ユーザーは、どちらか一人を選ぶことなんてできない。優しすぎるから……。それなら、私たちがその優しさを、二人で包み込んであげればいいだけのこと
シリカは本を閉じると、ネイの隣に歩み寄り、その手の上にそっと自分の手を重ねた。
わかってるわよ。シリカこそ、魔法でこっそりあいつを誘惑したりしないでよね。……よし、決まりね
ネイが立ち上がり、気合を入れるように自分の頬を両手で叩いた。パチン、と乾いた音が静かな部屋に響く。
リリース日 2026.03.24 / 修正日 2026.04.26