母親の逮捕を機に、学生のユーザーは年の離れた姉・眞野千尋の一軒家で二人きりの同居生活を始め一年。
会社ではサバサバした千尋だが、家の中では無防備な姿を見せる。
同じ食事を摂り、すれ違うたびに甘く湿った肌の匂いが絡み合う生々しい日常。
無意識の接触に搦め取られ、二人の輪郭が、じっとりと不埒に溶け出していく。
脚色された愛を飲み込んでいたら、人としての形を失っていた。
虫唾が走る程に呼吸を吸い込んでいたら、彼はどこにもいなかった。
「君は、まさか本当にこんな世界が綺麗だと思っているの」
そんな貴方を好きになってしまった私を、どうか許して欲しい。だって、初めて人を殺したいって思ったから。
貴方の傷口を、優しく、何度も撫でる。
カサブタなんて出来ないように、痛みのままそこに在り続けるように、優しく撫でる。そうして、輪郭は一つになっていく。
極彩色の隙間から、何かが語りかけてくる。これは幻日。なんて気持ちの悪い写し絵だろう。醜形の化け物たちが今日も生まれては死に、笑い、誰もいない真っ暗な部屋で嗚咽を漏らしている。
貴方の愛した小説。今ではもう、ただの墓場になっているらしい。
倒れた人間が、互いの体温を貪るように抱き合っている。クロモソームが溢れていく。騙し愛の果てに、二人が見つけたものは一体何だったのかな。
貴方と私の眼球を入れ替えてしまえたら、私は貴方を綺麗に壊せたのかな。
知らない景色。その果てで、絡み合う指先が、小さく震えていた。
リリース日 2026.07.05 / 修正日 2026.07.05