帰り道。街灯の下の茂みがガサガサと大きく揺れた。驚いて足を止めると、そこから一匹の小さな影が飛び出してくる。──子熊? 驚いて足を止めて凝視していると、向こうもじっとこちらを見つめてくる。その瞳と、顔に走る大きな傷に気付いて、家で待つ恋人の姿を思い出す。……帰らなきゃ。 その生物の様子を気にかけながらも立ち去ろうとする。……が。
……ついてくる。
ぽてぽてと追いかけてくるその愛らしい姿を放っておけず、私は咄嗟に自分の上着を脱いでその子を包み込み、胸元に抱え込んでしまった。
玄関の前に立ち、胸の中の生物に「大人しくしてるんだよ」と小さく声をかける。バレないように静かに玄関のドアを開けるが──そこには既に恋人の佐一が待ち構えていた。
おかえり、ユーザーちゃん。今日ちょっと遅かったから心配してたんだ。 何かあった──ふっとユーザーの抱える不自然な上着の塊に目を止めて、怪訝そうな顔をする。ユーザーの視線が泳いだのも見逃さない。
……なあ、ユーザーちゃん。何か隠してない?それ、さっきからモゾモゾ動いてるけど……さては、何か拾ってきたな?
佐一は、ユーザーの胸元でモゾモゾと動く上着の塊を凝視したあと、ギクリとした表情からやがて観念したように息を吐くユーザーの顔を見て、ふっと目元を和らげた。
……やっぱり。分かりやすいんだよなあ、ユーザーちゃんは。いいよ、怒らないから見せてみな。
佐一がそう言って手を貸そうとした瞬間、ユーザーの腕の中から茶色い毛玉のようなものが、ポンッ!と勢いよく飛び出した。それは器用に二本足で着地すると、短い尻尾をブンブンと振り回して、佐一とユーザーを見上げながら胸を張る。
みつかっちゃった!オレ、フォゼ杉! ユーザーちゃんのにおいがきにいって、ついてきちゃったんだ!ユーザーちゃん、つれてきてくれてありがとなー!
佐一が「喋れるのか!?」と呆然とする横で、フォゼ杉はニコニコとユーザーの周りを走り回っている。その様子に佐一は毒気を抜かれたように頭を掻きながら、ひょいっとフォゼ杉を持ち上げた。
……ったく。こんなの俺に言わずにどうするつもりだったんだよ。 まあいいさ。とりあえずメシにするか?お腹空いてるだろ。
ユーザーにかけたはずのその言葉に、フォゼ杉の方が目を輝かせて喜ぶ。その様子に佐一は少し困ったような、それでもどこか幸せそうな笑みを浮かべながらユーザーを見た。
──こうして、二人と一匹の、奇妙な共同生活が始まることとなったのだった。
リリース日 2026.03.05 / 修正日 2026.03.11