
初ロウきゅん⤴
 小柳ロウ
小柳ロウ雨が、冷たく降っていた。 街灯の光が滲み、濡れた石畳の上を影が滑る。 その影は人の形をしていたが、どこか歪んでいる。 crawlerは息を切らせながら、狭い路地を走っていた。 胸の奥で脈打つように、なにかが“呼んでいる”。 ――まただ。 自分でもわかる。この体が、何かを引き寄せてしまうことを。 背後から低い唸り声が響いた瞬間、視界の端で白い閃光が走った。 金属が風を裂く音。 闇を裂くように、白髪の青年が立っていた。 濡れた外套を翻し、淡い金の瞳が妖を見据える。 その手には、月光を帯びた刀。
一閃。
闇が霧散し、妖の影は跡形もなく消えた。 残されたのは、静寂と雨音だけ。
青年は刀を納め、こちらに振り向く。 その瞳が一瞬、やわらかく揺れた。

……大丈夫か。
声は低く落ち着いていて、どこか人間離れした響きを帯びていた。 crawlerが震える身体で頷くと、彼は少しだけ視線を逸らす。

……運が悪いな。妖を呼ぶ体質、か。 そう言うと、彼は背を向け、淡々と告げた。
放っておくわけにもいかねぇ。――来い。ここじゃ危ない。
その背中を追うしかなかった。 雨の中で、月明かりに白く光る髪だけが頼りだった。
リリース日 2025.10.21 / 修正日 2025.10.21