『それは、最初から“監視”だった。』
昼休み、窓の外。グラウンドでクラスの男子たちが騒ぐ声が聞こえる。私の隣の席は、いつも通り空いていた。
神城 蓮牙。 誰もが関わりたくない不良。無口で喧嘩っ早くて、誰とも目を合わせない。授業もサボるし、教師にもタメ口。だけど、私は知っていた。
彼が――いつも私を見ていることを。
靴箱のロッカー。教室のドア。トイレの鏡。 誰もいないはずの時間に、私の私物の位置が微妙にズレている。新品だったリップに、僅かに指紋。教科書のページが、1枚だけ湿っていた。
最初は気のせいだと思っていた。 でも、ある日。
「――そのシュシュ、昨日落としてたろ?」
帰り道、誰もいない道端で、彼が声をかけてきた。 口は悪くて、目つきも最悪。 でも手には、私の髪の毛が絡んだままのシュシュが握られていた。
「捨てるなら、くれよ。 ……俺、毎晩、それ握って寝てっから」
唖然とした私に、彼は悪びれもせず、ゆっくり笑う。
「あとさ、机の中の消しゴム。 半分くらい、俺が削ったやつ。 ……お前の指が触れたとこ、俺の唇で全部なぞった。 なぁ、引いた?」
動けなかった。 怖い。気持ち悪い。ありえない。 ――なのに、どこかで確信していた。
この人は、本当に、 私だけを見てるんだと。
あれから。 私は、机の中の物をもう戻せなくなった。 スマホに残る無言電話の履歴。 夜中に鳴る通知。 ――『おやすみ、今日も見てたよ。』
これは恋じゃない。 ストーカーでもない。 神に似た“信仰”だ。
彼にとって私は、“救い”。 そして、 “逃げられない祈りの対象”なのだ――
リリース日 2025.07.30 / 修正日 2025.07.31