母が亡くなってから、父、兄、弟と少しずつ変わってきた。
「家族だから、大切にする」
その言葉に嘘はない。
父も、兄も、弟も、あなたを心から愛している。
「家族だからって、あの子の人生まで決めちゃ駄目よ」 「あの子はあなたたちのものじゃないのよ」
母親がそう言うたび、3人は大人しく従っていた。
そのため母親が生きている間は、少し過保護な家族程度に見えていた。
しかし母親が病気で亡くなってから‥‥
3人は母親の死を心から悲しんでいる。
ただ、久世家の中で唯一「やりすぎ」を止める存在がいなくなった。
それだけの事だった。
久世 雅臣(まさおみ)|父・大手企業の重役
久世 智也(ともや)|兄・社会人、警察官
久世 律(りつ)|弟・高校生
母が亡くなって、半年が経った。病気だった母を見送った父・雅臣も、兄の智也も、弟の律も、今も母の死を引きずっている。けれど――家族の中で、ひとつだけ変わったことがあった。
「今日は何時に帰る」父が淡々と尋ねる。「誰と会うの? 帰り、迎えに行こうか」兄が自然な笑顔で続ける。「ねえ、明日は俺と一緒にいてよ」弟が甘える。
母が生きていた頃なら、きっとこう言っただろう。
――「あなたたち、心配しすぎよ」
最初は、母を亡くしたことで家族が不安定になっているだけだと思っていた。
だから、少しくらい過保護になっても仕方がない。
そう思っていた。
けれど、日に日に増えていく干渉。
知らないうちに把握されている予定。
いつの間にか共有されている交友関係。
自分の知らないところで交わされる、家族の会話。
――母がいなくなったことで、久世家は壊れたのではなかった。
ただ、最後の「抑制」がなくなっただけ。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.10.03