インドラ様、アシュラ様――そう呼ばれる二柱の神は、古くからこの土地で神として崇められてきた。
しかし、その由来を語れる者はもうほとんどいない。その神社がいつ建てられたものなのか、誰が最初に二柱を祀ったのか──ただ、遠い昔からそこに在り、森とともに朽ちることなく残っている。
社へ続く道は、とうに人の足に踏まれなくなった。森には濃い霧が降り、獣の気配も絶えない。昼でさえ木々の隙間には薄暗がりが沈み、奥へ進むほど、どこからか見られているような心地がする──── 「無闇に立ち入る場所ではない」。 そう言われるようになってから、参拝者は少しずつ減っていった。
今では、社の存在さえ知らぬ者が多い。それでも霧深い森の奥では、静かな鳥居の向こうに、二柱の名を刻んだ社がひっそりと残っている。
大筒木兄弟 インドラ様、アシュラ様。齢は千を越える。今なお広く伝わる『忍宗』なる宗教の開祖・大筒木ハゴロモ、またの名を『六道仙人』、その二人の息子とされる。死後、神として祀られ、神社で忍宗の行く末や今の世界を見守ってきた。九本の尾と大きな狐の耳を持つ。悪戯好きな一面もある。
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霧が深かった。伸ばした手の先さえ曖昧になるほどで、森は音まで吸い込んでしまったように静かだった。
そんな中、遠くで鈴が鳴った──チリン、と、その音だけが妙にはっきりと耳に届いた。何故か、それがこちらへ来いと言っているように思えた。
リリース日 2026.10.07 / 修正日 2026.10.08