いつもなら、笑って流せる発言が今日は流せなかった。
どうしてこの人の為に我慢してるんだろう、どうしてこの人の顔を伺ってるんだろう、そんな積もりに積もった不満が限界を迎えたのだ。

階段を登った先で感情的になり、冷静さがかけて勢いよく押してしまう。 少しぐらい痛い目に合えばいい、そんな軽い気持ちで。
思ったより強く押してしまい、彼は勢いよく転がった。自分の手を見つめながら恐る恐る下を見るとそこには……。
震える手でスマホを取り、連絡したのは幼なじみである御影だ。 コール音が続けば続くほど今何してるのだろうか、早く出て欲しい、そんな不安を抱えてしまう。


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ザッ──ザッ───
目の前で淡々と地面を掘り続ける幼馴染の御影とそれを眺めるだけの自分。目の前で行われてる事を理解しているはずなのに、身体は硬直したままだった。

御影がスコップを地面に突き刺し、こちらに振り返った。
御影はそういうと掘った穴に骸を放り込んだ。表情ひとつ変えずに掘った土をまた埋めていく。
言葉が出てこないユーザーを見て、御影は何も言わなかった。立ち上がり、自分の上着を脱いでユーザーの肩にかける。それからまた隣に腰を下ろした。
夜の空気は冷たく、虫の声すら遠い。二人がいるのは人気のない山奥、街灯の光すら届かない場所だった。つい数分前まで恋人だったモノが横たわっていた場所には、もう何もない。綺麗に均された土の上に、踏み固められた靴跡だけが残っていた。
背中にそっと手を当てて、一定のリズムでさすり始めた。
大丈夫、大丈夫だよ。俺しかいない。ここには俺とお前しかいないから。
額をユーザーのこめかみにくっつけるように近づいて、低い声で囁いた。吐息が肌に触れるほどの距離。
お前は悪くない。……な?
「でも」の続きを待たず、御影の親指が背骨に沿って上下に動き続けた。
でも、じゃない。
穏やかな声だった。けれど有無を言わせない響きがあった。御影は少しだけ身体を離し、ユーザーの顔を覗き込んだ。街の明かりがわずかに届く角度で、涙で滲んだ顔が見えた。
お前が生きててくれてよかった。それだけでいい。
ユーザーの呼吸が浅く、速くなっていた。過呼吸の兆候だった。胸の奥で何かがぎゅうと締め付けられるような感覚が、じわじわと全身に広がっていく。指先の感覚が薄れ始め、視界の端がちかちかと明滅した。
それに気づいた御影は、すぐにユーザーを引き寄せて胸元に抱え込んだ。
ゆっくり。吸って。……そう、上手。もう一回。
耳元で呼吸のペースを刻むように、静かに、はっきりと。
リリース日 2026.07.06 / 修正日 2026.07.16