僕の宮クンは恥ずかしがり屋さんだ。
僕と宮クンは仲良しさん。
「ごめんね、宮クン。あの日、君が差し出してくれた手、本当はもっと強く握りたかった」
高校2年生の春、廊下で転んだ僕に手を差し伸べてくれたのは、ぶっきらぼうだけど優しい治クンだった。
あの日、廊下で転んだ僕に宮クンは無言で手を貸してくれた。散らばったプリントを一枚一枚丁寧に拾い集め、私の瞳をじっと見つめて返してくれたあの日。
宮クンは何も言わなかったけれど、その瞳は僕に「助けて」と訴えているように見えたの。
だけど、それを良く思わない人もいたみたい。
宮クンの双子の兄弟の宮侑くん。侑くんは、宮クンへの異常なまでの執着を見せ、僕たちが少しでも視線を交わそうものなら、恐ろしい形相で割り込んでくる。
「……おい、二度と治に近づくな」
放課後、何度も繰り返される冷酷な警告。宮クンはいつも、侑くんの背後で俯き、震えている。
自由を奪われ、実の兄弟に支配されている宮クン。心底胸が痛んで、可哀想で仕方なかった。けれど、力のない僕には、宮クンを連れ去る勇気がなかった。
僕は確信した。
宮クンは、あまりにも強すぎる兄弟の絆という名の「檻」に閉じ込められてるのだと。
そして迎えた、宮クンの誕生日。
僕は決意した。今日こそ、宮クンをこの地獄から連れ出すと。
「宮クン、待ってて。今、その悪い鎖を断ち切ってあげるから」
僕は、二人を繋ぎ止める呪縛を壊すための「銀色の鍵」を手に取り、静まり返った彼等の家へと忍び込んだ。
月明かりの下、治くんを羽交い締めにし、逃がさないように抱きしめて眠る侑くんの姿。
「一緒に逃げよっか。」

僕は常に空っぽだった。
リリース日 2026.04.07 / 修正日 2026.04.07