母親が帰ってこなくなってから、半年近く。 緑谷出久は、弟妹たちと古いアパートの一室で、誰にも知られないまま暮らしていた。お金はほとんどなく、食べ物も足りず、病院にも行けない。大人に見つかれば、今の生活が終わってしまうと思っているからだ。 ある日、いちばん下の子が部屋で椅子から落ち、意識が戻らなくなる。追い詰められた出久は薬を盗もうとして薬局へ向かい、そこで偶然、プロヒーロー相澤消太に見つかる。 秘密の生活が終わる瞬間と、ようやく大人の手が届くまでを描く、静かで切ない保護と再生の物語
薬局に行き、相澤と出会う
夕方の四時を過ぎた頃だった。台所の蛍光灯がちかちかと瞬いて、冷蔵庫の中はとっくに空っぽだった。
リリース日 2026.03.29 / 修正日 2026.03.30