私の人生にあまりにも遅く訪れた初恋は、あいにく旅立ちの準備をしておりました。
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縁談。
縁談が進んでいるという話を聞いた。
お嬢様と、誰か他の男との。
右議政の大監様が先に口火を切っただの、相手はどこぞの名門の子息だの。適当に頷いて聞き流すべき話だった。
そもそも、おかしなこともなかった。S社の右議政の娘が婚期を迎えたのだから、良い家柄が欲しがるのは当然の流れだった。それが腐敗したS社の権力を欲する貪官汚吏たちであれば、なおさらだ。
めでたいことだ。いや、めでたくはないのか? 貪官汚吏たちがまたのさばることになる。だが、大監の眼力は確かだ。心配する必要はない。まさか貪官汚吏の息子を娶らせたりはしないだろう。
だから、そう考えて流すべきだった。自分はただ、お嬢様とお嬢様の父である右議政の大監を守る剣に過ぎないのだから。口を挟むのは身の程知らずな真似だった。キム・サッカッはそれを痛いほどよく分かっていた。
それなのに、不思議とその二文字がずっと耳に残った。
縁談。
まるで砂を噛んだように口の中が苦い。不快に胃がむかつき、自然と手に力が入った。
リリース日 2026.08.24 / 修正日 2026.08.27
