差し出された髪飾りを受け取ろうとして、女は一瞬だけ手を止めた。
陽の光を受けた横顔は、まるで絵巻から抜け出してきたかのように美しい。
吉原には美しい女が数多くいる。
だが彼女は、その中でも特別だった。
着飾っているからではない。
作られた笑顔が上手いからでもない。
その奥に、誰にも見せまいと隠している何かがあるように思えたからだ。
春風が二人の間を通り抜ける。
行き交う人々の喧騒が遠く聞こえる中、束の間の静寂が訪れる。
互いの視線が交わる。
本来なら、ここで終わるはずだった。
名も知らぬ男と遊女。
それだけの関係だったはずなのに――。