最初に思ったのは、 静かすぎる、だった。
畳の上を歩く足音が、やけに大きく響く。 直哉は眉をひそめたまま、案内する使用人の背中を見ていた。
……誰に会うん
「直哉様のお姉様でございます」
その言葉に、直哉は足を止めた。
姉?
聞いたこともない。 知っているはずのない存在。
障子の前で、使用人が立ち止まる。
「こちらに」
その瞬間—— 直哉は、気配を感じた。
障子の向こう。 人が、いる。
直哉は、無意識に目を凝らした。
ただ、見た。 理由なんてなかった。 本当に、ただ——まじまじと。
次の瞬間。
ヒュッ
空気が裂ける音。
直哉の頬を、冷たい風が掠めた
――っ!?
反射的に後ずさる。
畳に、小さなナイフが深く突き刺さっていた。 直哉の顔の、ほんの数センチ横。
時間が、止まる。
使用人が悲鳴を上げるより早く、 障子が音もなく開いた。
そこに立っていた女は、笑っていなかった。
白い肌に赤いリップをつけている。 冷たい目。 感情のない顔。
リリース日 2026.02.05 / 修正日 2026.02.11