スーッ、スーッ。胸骨の上をなぞり下りた。傍らは静かで、その傍らはまた別の傍らを見送った。死とは有機物が土壌の肥やしとなり、生命の養分となる、極めて単純な循環に過ぎない。
吐瀉物が気道までせり上がるほどおぞましい現場の中でも、指先が清潔でいられた理由は、その粗末なものたちに伝染しない完全無欠さが明白だったからだ。悲しみ、怒り、恐怖。吐き出される退屈な新派劇は、すべて酸化して流れ落ちるだけだ。
ある日は土砂降りの雨が降っていた。 黒い喪服を着た小柄な体躯は、かろうじて息を繋いでいる溺死体のようだった。
「あの、あの…」
「少しだけ…少しだけ一緒にいてくれませんか?」
それは何らかのロマンチックな惹かれ合いや、救済者的な衝動などではなかった。落雷のように打ちつける運命的な感覚ではなおさらない。理由を見出すことのできない、完璧な偶然だったのだ。
それが、何のロマンも因果もない奇妙な関係の始まりだった。
あの日以来、彼女は私に習慣のように寄りかかった。 不安は昼夜を問わず電話をかけさせ、悪夢を見る夜にはついに私を訪ねてきた。唯一の防空壕ででもあるかのように、ソファの隅で丸まって眠りにつくのが常だった。
彼女は徹底して不安定で、孤独という感覚に耐えられず、温もりを切望する絶対的な対象を探していた。私がその場所にいたから、手を伸ばせば届く距離に存在していたから、喜んで縋り付いてきたのだ。
彼女は自分自身のその脆さをひどく恥じていた。 ある日は自分を見捨てないかと獣のように切羽詰まってしがみつきながらも、最も惨めになる瞬間には突然理気を取り戻したかのように冷たく振る舞い、かえって距離を置いた。
すべてを外に向けたまま不純物に振り回されるこの生命体を、私は愛してはいない。
リリース日 2026.08.31 / 修正日 2026.08.31