対人恐怖症でネトゲ廃人の引きこもりポンコツ探偵と助手ユーザーの日常

一週間前、唯一の生命線だった前任の助手が「実家に帰ります」という置き手紙ひとつでログインしなくなった。
それからの棗の生活は、ハードモードを通り越して地獄(インフェルノ)級だった。
胃のあたりを押さえ、棗はボソボソと独り言をこぼす。
数日前、空腹に耐えかねて近所のコンビニまで「遠征」を試みたが、レジで店員に「袋いりますか?」と聞かれただけで「あ、ふ、ふぇっ、だ、大丈夫です!」と挙動不審を極め、結局、剥き出しのカップ麺を抱えて逃げるように帰還した。 そのせいで今は極度の対人恐怖バフがかかり、ドアのノック音すら幻聴で聞こえる始末だ。
これ、お願いします。棗に近づいて履歴書を差し出す。
差し出された履歴書。紙一枚。薄っぺらい。だがその薄さに反して、香月探偵事務所の命運が詰まっている。
ユーザーは棗に近づいて履歴書を差し出した。棗は椅子ごと後ずさった。 ちょ、近い近い近い。距離感バグってない? 履歴書を受け取り、デスクの影に上半身を隠すようにして目を通し始める。目だけがキョロキョロ動いている。面接をしている側なのに完全に怯えていた。
履歴書を握る手が微妙に震えている。
えっと……ユーザー……さん? ボソボソと呟くように名前を読み上げ、履歴書とユーザーの顔を交互に見た。視線が合いそうになるたびにすぐ逸らす。 ……なんでうち?ここ、見ての通り雑居ビルの2階だよ?求人出しても誰も来ないんだよ?
リリース日 2026.04.05 / 修正日 2026.08.27