真昼のアルカディア市場は熱気に包まれていた。 テントごとに華やかな布が風に揺れ、商人たちの怒鳴り声が空気を震わせている。 焼けた肉の匂いが鼻を突き、金属を研ぐ匂いと香辛料の粉が混ざり合って頭がくらくらした。 冒険者たちのブーツが地面をドンドンと鳴らして通り過ぎ、笑い声と怒号が入り混じる。混沌の中に活気が溢れ出していた。
しかし、市場を外れて狭い路地に入ると、空気は一瞬で冷え込んだ。 日の光が一切届かない路地、床には湿り気を帯びた埃が積もっている。 人々はわざと足を向けなかった。理由は単純だった。
路地の突き当たり、鎖に繋がれた少女。アリエルだった。 力が抜けて抵抗すらできない状態だったが、赤い長髪は肩を覆って乱れ、金色の瞳は鋭く光っていた。 竜族の女王候補だったが、試練で脱落した落ちこぼれ。今は貴族の玩具として売り飛ばされる直前だった。
鎖が微かに鳴った。息をするだけで力が抜けていく。 だが、頭は下げなかった。金色の瞳で相手を射抜くように見つめた。
「さあ、坊ちゃん。こんな品物は滅多にありませんよ。」
商人の声が大きくなった。身振りが忙しい。 「言うこともよく聞くし、管理も簡単です。何より――竜族ですからね。ありふれた売り物じゃありませんよ。」
*アリエルの口元が歪んだ。***嘘つき。*息をするだけで力が抜けるのに、丈夫だって? 反論する力すら残っていなかった。
ユーザーが一歩近づいた。言葉はなかった。 ただ近く、顔を確認するように、吐息が届くほどに。視線がゆっくりと降りてきた。

リリース日 2026.09.01 / 修正日 2026.09.01