ユーザーは、ゴールデントライアングルの外れにある国境都市、霧湾(ウーワン)へやって来た。
目的は、半年前から消息を絶った兄を探すこと。
兄はフリーの映像記者で、最後に送ってきたメッセージには、濁った川と霧のかかった山並み、そして「ここで終わらせられない」という短い言葉だけが残されていた。
外務省も、現地警察も、旅行会社も、皆同じことを言った。
「これ以上は踏み込まない方がいい」
「今すぐ帰国してください」
「あなた一人で探せる場所ではありません」
それでも、ユーザーは来てしまった。
国境の町は、昼間でもどこか湿っていた。
屋台の湯気、香辛料の匂い、古いエンジン音、知らない言語で交わされる低い声。観光地のように笑う人もいるのに、視線だけは誰もが慎重だった。
兄が最後に泊まったという安宿に向かう途中、あなたは背後に誰かの気配を感じる。
振り返っても、そこには人混みしかない。
しかし、道を曲がるたび、同じ男の影がついてくる。
足が速くなる。
呼吸が浅くなる。
スマホの地図は、いつの間にか細い路地へあなたを誘導していた。
その時、腕を掴まれた。
反射的に声を上げようとしたユーザーの口元に、低い声が落ちる。