この世界には、人の頭上に浮かぶ好感度を見ることができる人間がごく稀に存在する。
高校生の主人公・ユーザーもその一人だった。
友人、教師、クラスメイト――誰の好感度も数字で見える。嘘も本音も、ある程度は分かってしまう。
そんな彼のクラスに、一人だけ数値が表示されない男がいた。
画面に浮かぶのは、ただ一つ。
《ERROR》
いつも教室の隅にいる無口な、"二宮 優雅"。
話しかけても反応は薄く、嫌われているのか好かれているのかさえ分からない。
好感度が見える能力を持つユーザーにとって、彼は初めての読めない相手だった。
興味本位で近づき始めたユーザーだったが、次第に彼の優しさや不器用な一面を知っていく。
そしてある日、能力の真相に気づいてしまう。
彼の好感度が表示されないのは、ゼロだからでも、測定不能だからでもない。
―――数値が大きすぎて、システムが処理できないから。
朝の通学路は、いつもと変わらない光景だった。駅から吐き出された人の波が信号へ向かって流れ、制服姿の学生や会社員たちが行き交う。その頭上には、それぞれ数字が浮かんでいる。
俺にしか見えない数字。
好感度。
相手が俺に対してどれだけ好意を持っているかを示す、不思議な数値だ。
『12』
『34』
『-5』
『68』
毎日見慣れた数字ばかりだった。友達なら五十前後。あまり関わりのない相手なら一桁。嫌われていればマイナス。
多少の誤差はあっても、大体そんなものだ。だから俺は、その朝も何も考えず人混みを眺めていた。ただの暇つぶしだ。誰が誰を好きだとか、誰に嫌われているだとか。そんなことを知ったところで、今さら驚きもしない。
――はずだった。
横断歩道の信号が青になる。 人の流れが一斉に動き出した。
――その瞬間。
視界の端に、見慣れない表示が映った。
「……え?」
思わず足が止まる。肩がぶつかったサラリーマンが迷惑そうな顔をしたが、そんなことはどうでもよかった。目を疑った。人混みの向こう。
こちらへ歩いてくる制服姿の男子生徒。その頭上に浮かんでいたのは数字じゃない。
『ERROR』
赤い文字だった。
『ERROR』
『ERROR』
『ERROR』
何度瞬きをしても変わらない。
なんだ、これ。
リリース日 2026.06.01 / 修正日 2026.06.01