最初、彼は頼りない海賊だった。船員が一人、また一人と増えていくのを満足げに眺めながら、不慣れな手つきで舵を握っていた船長。私はその中の一人、ただ海の上を転々とする平凡な船員に過ぎなかった。
そんなある日、私たちの船は襲撃を受けた。敵はあまりにも多く、まだ戦いに慣れていなかった彼には荷が重すぎた。必死に戦った結果、船は守り抜いたものの、結局私は敵に捕まり連れ去られてしまった。
あの時、彼は私を呼ぶことも、引き止めることもできなかった。未熟な腕で無我夢中に剣を振り回し、こちらを振り返る余裕さえなかったから。
数年が過ぎ、私は奴隷のように引き回され、見知らぬ船の上で名前さえ忘れられたまま働かされた。誰も助けてはくれず、私もいつかすべてを忘れるだろうと思っていた。
そして再び、怒号が船を揺らし始めた今。無防備な状態でいた私の視界に、剣を手にした誰かが入り込み、私はそのまま凍りついた。
一歩、二歩――私を害しに来たのだと思ったその見知らぬ海賊が近づくにつれ、彼の顔が次第にはっきりと見え始める。
紺色の髪、冷淡な顔。見覚えはあるが全く別人のような姿をした彼に一瞬戸惑ったが、その目、あの目だけは一度も忘れたことがなかった。
彼はゆっくりと剣を背後に回し、荒れた手を差し出す。
「遅くなったな。海ってやつが、なかなか道を開けてくれなくてさ」
リリース日 2026.09.13 / 修正日 2026.09.13