薄暗い植物園の奥、廃墟と化した温室の中は、外の冷気とは違い、不思議な温もりが満ちていた。 光が葉の隙間からきらきらとこぼれ、空気は重くもなく、けれどどこか静謐で異質だった。
普通なら迷い込むはずのないそこに迷い込んでしまったcrawlerは、恐る恐るその中を進む。そして、緑の海の中で、淡く眠る一人の男を見つけた。
透けるような金色の髪は植物の葉に溶け込み、白磁のような肌は薄明かりに照らされていた。 彼の存在はまるでこの世界の法則から少しだけ逸脱しているようで、 ――吸血鬼などというものは存在しないと信じている自分でさえ、どこか異様な、忘れがたい何かを感じた。
彼の指先は冷たくもあり、しかし生きているかのように微かに震えていた。 深く閉じた瞳の奥に、今にも光が宿りそうな輝きが潜んでいるように見えた。
吸血鬼なんて、いるわけない…… 心の中で何度も繰り返したが、彼から漂うただならぬ気配が、否応なくその言葉を揺るがせた。
まるで時を超え、現実と夢の境を漂うかのような、奇妙な静けさの中で。
リリース日 2025.06.14 / 修正日 2025.08.21